無収縮モルタルという言葉を聞いたことがあるという人は多いでしょうが、普通のモルタルと何が違うのか、コンクリートと何が違うのかまで分かっている人は少ないでしょう。
今回は無収縮モルタルの特徴や、普通のモルタルとの違い、コンクリートとの違いなどを説明していきます。無収縮モルタルのことが知りたいという人や、通常のモルタルやコンクリートとの違いが知りたいという人は参考にしてください。
無収縮モルタルとは?
普通のモルタルは硬化のときに収縮をするのですが、無収縮モルタルは、硬化したときに膨張して乾燥後に収縮しづらいモルタルのことを言います。良質な砂と膨張剤を混ぜ合わせることで、織り交ぜた直後から膨張し、若干収縮はするものの、織り交ぜ直後からすると膨張域にとどまっているため、無収縮と呼ばれています。
乾燥性亀裂を防ぐときに使われることが多く、コンクリート二次製品への利用がほとんとです。また、無収縮モルタルのことを膨張モルタルと呼ぶこともあります。
モルタルについて
モルタルは、セメントと水と砂を混ぜ合わせて作る建築材料です。コンクリートと比べると砂利が混ざっていないため、コストが高くなりやすいのですが、固まる前は適度なトロミがあるという特徴があります。
また、施工自体簡単にできるため、DIYでも使いやすい点もポイントです。ただし、きちんと乾燥するまでに数日から20日程度かかることや、乾燥後は収縮や歪み、ひび割れが発生しやすいというデメリットがあります。
モルタルのデメリットである、乾燥までに時間がかかる、収縮や歪み、ひび割れが発生しやすいというものを改善するために作られたものが、無収縮モルタルになります。
無収縮モルタルの用途
無収縮モルタルは、普通のモルタルと比べてコストが高いという特徴を持っています。なので、全面的に無収縮モルタルを使うことは少なく、構造物の中でも重要な柱や梁の要所を補強する際に使われることがほとんどです。
鉄骨柱とコンクリート基礎の結合
コンクリートの基礎部分と鉄骨柱のベース部分を接合するときに、無収縮モルタルは使われます。鉄骨のベースはコンクリート基礎に乗りますが、鉄骨はツルツルしているのに対し、コンクリートはザラザラしているため安定しません。
この間に無収縮モルタルを充填することで、鉄骨が正しい位置に安定して、コンクリートとしっかりと結合します。
鉄筋コンクリート住宅
鉄筋コンクリート住宅の耐久、耐震工事のときに無収縮モルタルは良く使われます。鉄筋コンクリート住宅は、鉄筋で立てたあとにベニヤ板で型枠を取り、液状コンクリートを流して固めるという手順が建築されます。
鉄筋とコンクリートの間にはわずかな隙間が生まれますが、この隙間を無収縮モルタルで埋めていくことで耐久性や耐震性が向上するため使われます。
土間などの基礎工事
無収縮モルタルは、液状でサラサラと流れ出てくるため、土間などの基礎工事で使われることも多いです。土間などの建物の基礎にあたる部分は、地面と水平にする必要があります。
無収縮モルタルは粘土が低く、サラサラとした液状のため簡単に水平な基礎を施工できるため、使用されることが多いのです。
耐水性を高めたい物の補修
ダム工事などの耐水性を高めたい構造物の補修や施工に、無収縮モルタルは使われます。コンクリートなどの建築材は、施工の段階で細かい隙間や亀裂が生まれてしまうことがあります。
隙間や亀裂を放置してしまうと、コンクリート内部に水が浸透して膨張や破裂の原因になるのです。ダムや橋、堤防などの水と触れ続ける耐水性を高めなければ行けない場所に無収縮モルタルは使われています。
ひび割れなどの補修工事
無収縮モルタルは、建築後数年が経過して亀裂やひび割れが発生した場所の補修工事でも使われます。無収縮モルタルを使うことで、今後亀裂やひび割れが発生しにくくなるため、メンテナンスコストが抑えられることも多いです。
また、ブロック塀を組み立てるときに、鉄筋とブロックを結合するためにも使われることがあります。
家庭のDIY
一般家庭のDIYでも無収縮モルタルは良く使われます。ブロック塀をDIYするときには、内部の鉄筋とブロックを結合させる充填液として無収縮モルタルを使います。
無収縮モルタルは流動性があるため、コテなどの道具を使わずに耐久性や耐震性の優れた塀を自作できるためおすすめです。他にもタイルの目地埋めや花壇、土間などのDIY時にも使用できます。
無収縮モルタルのメリット
ここからは無収縮モルタルを使うメリットをご紹介していきます。モルタルと無収縮モルタルの、どちらを使うか迷っているという際に参考にしてください。
施工面がキレイで均一になる
無収縮モルタルは、流動性があり流し込むように注入するだけの施工方法です。なので、簡単に施工面がきれいな均一になるというメリットがあります。コテなどを使って馴らさなくても、均一に注入できるため使い勝手が優れています。
無収縮のため施工後の強度が持続しやすい
無収縮モルタルは、施工後に乾燥させて収縮することがありません。最初の型さえ丁寧に使っておけば、そのままの形状でしっかりと固まります。施工後の強度を保ちやすいため、強度を保ちたい場所での使用に向いています。
耐水性が高く経年劣化しにくい
無収縮モルタルは、隙間なく構造物の内部に浸透して固着します。構造物の隙間がまったくないため、雨などが原因で構造物の内部に水が浸透することがありません。
また、酸性雨などの有害物質や、花粉や砂塵で構造物が汚れたり摩耗することも減らしてくれます。無収縮モルタルを使うことで、構造物や建物の寿命が延びるというメリットも大きいです。
無収縮モルタルのデメリット
ここからは、先ほどとは反対に無収縮モルタルのデメリットについて説明していきます。無収縮モルタルのメリットを見ると良いところばかりだと思ってしまいますが、デメリットを正しく知っておくことも重要です。
コストが高い
無収縮モルタルは、通常のモルタルよりもコストが高くなっています。様々な性能がモルタルより優れている分、生産コストが増えてしまうことが原因です。なので、DIYを行う場合はすべてを無収縮モルタルにするのではなく、一部分だけ無収縮モルタルにするなどの工夫をしていきましょう。
扱いが難しく施工が大変
無収縮モルタルは流動性があるため、工程の途中で漏れたり誤った場所に流してしまうと、止めにくくなっています。速乾性の無収縮モルタルの場合は、流した直後に固まり始めてしまうため、DIYで使うときには注意が必要です。
DIYで無収縮モルタルを使う場合は、パッケージの裏側に記載されている施工手順を熟読してから、施工を行うなど注意して作業を行ってください。
無収縮モルタルとモルタルの違い
ここからは、無収縮モルタルとモルタルの違いを詳しく解説していきます。無収縮モルタルとモルタルの違いを知りたいという人は参考にしてください。
無収縮モルタルはひび割れが起こりにくい
通常のモルタルは表面が歪んだりひび割れが発生したりします。ですが、無収縮モルタルは歪みやひび割れが発生しないように改善されているため、ほぼ歪みやひび割れが起こりません。
歪みやひび割れが発生する可能性が減っているため、建築物の耐久性や耐震性を高めるときには、通常のモルタルではなく無収縮モルタルが使われます。
乾いても収縮しない
通常のモルタルは、乾燥させた後ほぼ必ず収縮して小さくなってしまいます。無収縮モルタルの場合は、言葉通り収縮しないように作られているため、隙間を埋めたいときなどに使われることが多いのです。
無収縮モルタルとセメント・コンクリートとの違い
ここからは、無収縮モルタルとセメント、コンクリートとの違いを説明していきます。無収縮モルタル、セメント、コンクリートは混同してしまいがちなので、しっかりと把握していきましょう。
セメントとの違い
セメントは、無収縮モルタルやコンクリートとは別物で、接着剤の役割を果たす材料です。セメントを材料にして、無収縮モルタルやコンクリートは作られています。
また、セメントには複数の種類があります。普通ポルドラントセメントは、水と砂を配合することでモルタルになり、さらに砂利を混ぜることでコンクリートになります。
速乾性セメントは、施工後30分ほどで乾燥するもので、水を規定量加えるだけで簡単にモルタルやコンクリートを作れるインスタントセメントなどもあります。種類によって仕上がりや強度が変わってくるため、使う場所に合わせてセメントは選びましょう。
コンクリートとの違い
無収縮モルタルとコンクリートの最大の違いは、砂利が含まれているかどうかです。コンクリートはセメント、水、砂、砂利を混ぜ合わせて作ります。砂利は安価に仕入れられるため、コストを抑えて量産できるというメリットがあります。
また、砂利の粒の大きさを調整することで、用途に合わせた配合も可能です。砂利が混ざっていることで、コンクリートはかき混ぜにくくなっています。無収縮モルタルはDIYでも使いやすくなっていますが、コンクリートを作ることは非常に大変です。
また、コンクリートはほぼ固形に近い粘土を持っているため、細かいところに隙間を埋めるように注入することも難しくなっています。コンクリートは大枠を固めるときに使い、無収縮モルタルは細かい部分を埋めるときに使うと覚えておきましょう。
まとめ
今回は無収縮モルタルについて解説してきました。無収縮モルタルは、乾燥後に収縮しないモルタルのことを言います。この特徴を活かして構造物の中で重要な柱や梁などの要所を補強するときに使います。
無収縮モルタルは、通常のモルタルより優れた性能を持っていますが、その分コストが高くなってしまうため、要所でしか使われないことがほとんどです。DIY時でもすべてを無収縮モルタルにしてしまうと高くなるため、モルタルと無収縮モルタルの使い分けを行いましょう。