現在の外壁がALC外壁である場合、どのようにメンテナンスを行えばよいのでしょうか。また、ALC外壁特有の注意するべきポイントはどのようなものがあるのでしょうか。
今回の記事では、このようなALC外壁に関する疑問におこたえするため、ALC外壁のメリットやデメリット、メンテナンス相場、メンテナンス時の注意点について詳しく解説していきます。
これからALC外壁をメンテナンスしようとお考えの方は、ぜひ参考にしてみてください。
ALC外壁とは
ALC外壁は他の外壁素材と比べて様々な特筆する特徴があります。ここでは、特徴の説明と他素材との比較を行います。
ALC素材の特徴
ALC外壁とは「軽量気泡コンクリート」とも呼ばれるコンクリートの一種です。
コンクリートとは一般的に重いものと思われがちですが、ALCは内部に気泡の穴が空いており、水に浸すと浮くほど軽量な素材です。通常のコンクリートの約1/4の重量となっています。
また、この気泡に含まれた空気が層をつくり、熱の伝わりを抑制し、夏の暑さや冬の寒さから室内を一定の温度に保つ断熱効果が期待できます。
ALCは耐久性も高いため、建築物の構造材料として戸建住宅から高層ビルまで、外壁、屋根、床用などさまざまな用途で使用されています。
他の外壁素材との比較
ALCと他の外壁素材を以下のように比較してみます。
外壁材 | 特徴 | 新築時の ㎡単価 | メンテナンス周期 |
---|---|---|---|
窯業系サイディング | 耐火性が良い 施工性が良い 色・バリエーションが豊富 | 3,000円~ | 約10年 |
モルタル | デザインが豊富で意匠性に優れる 継ぎ目がなくコーキングが不要 | 4,500円~ | 約10年 |
ALC | 断熱性・耐火性に優れる コンクリートの1/4の重量 | 7,500円~ | 約10年~15年 |
金属系サイディング | 断熱性に優れる 軽量で耐震性に優れる | 4,000円~ | 約10年~15年 |
以上のように、ALC外壁はデザイン性が豊富で継ぎ目がないため外観を保つ効果があり、自宅の見た目を良くしたい場合にはぴったりの外壁素材です。
ALC外壁のメリット・デメリット
ALC外壁にはメリットとデメリットが存在します。それぞれ詳しく解説していきます。
ALC外壁のメリット
まず一つ目のメリットとしては、ALCという素材自体の高い耐久性です。
定期的にメンテナンスをすれば、50年程度は外壁張替えなどの大規模工事が不要であり、非常にコストパフォーマンスに優れていると言えます。
近年の少子高齢化、人口減少に伴って、新しく家を建てるより長く住むということが重要視されていますが、建て替えからメンテナンスをして長く住むという時代の流れに適合した素材と言えます。
二つ目のメリットは、 断熱性に優れ、季節の温度変化の影響を受けにくいという点です。
ALCは内部に無数の気泡を含んでおり、この気泡が空気の層を作っています。この空気の層が外部からの熱を断つことで「夏に涼しく、冬に暖かい」住宅を実現しやすくしてくれます。
さらに、断熱性を高めることで夏場や冬場などのエアコンの使用率を減らし電気代の節約にも期待できます。
また、 三つ目として、耐火性に優れ、住宅の安全性を保持できるというメリットがあります。
ALCの主原料が無機質であるセメントやケイ石などであるため、炎や熱を受けたとしても燃えにくく有害物質が発生しません。また火事になった場合などにも炎が燃え移る危険性を低くすることができ、安心のできる壁素材と言えるでしょう。
ALC外壁のデメリット
ALC外壁のデメリットとしては、吸水性が高いということが挙げられます。
主成分のセメントは水をよく吸うことで知られていますが、ALC外壁もその例外ではありません。
外壁表面を守る塗膜が劣化すると、ALC内部の気泡に水が浸入し、冬場の寒さによって内部の水が凍結、水が膨張しひび割れが発生するといった現象が起こり、建物自体の耐久性を低下させる恐れがあります。
この現象は、塗装によるメンテナンスを施し外壁表面を保護することである程度対処することができます。
二つ目のデメリットとしては、ALC外壁が比較的高価だという点です。
先ほどの表でも紹介したとおり、ALC外壁は一般的な外壁素材と比べ単価が高く、広い面積の工事は非常に高額な費用が発生する場合があります。
ALCは外壁材の中でも機能性が総合的に高い分、費用が高くなることは当然です。金額をもとに、ライフプランをよく考慮した上で選択する必要があります。
ALC外壁のメンテナンス費用相場
ALCの塗装メンテナンス費用は、使う塗料によっても変わりますが、おおよそ80~200万円程度になります。
ALC外壁に使用する塗料別の費用相場を以下に紹介します。
塗料 | 耐用年数 | 費用相場 |
ウレタン | 8~10年 | 80~125万円 |
シリコン | 10~15年 | 100~140万円 |
フッ素 | 15~20年 | 120~165万円 |
無機 | 20~25年 | 125~200万円 |
上記のように、最も安いウレタンであれば100万円前後で収まりますが、耐用年数は最も短く最長でも10年程度です。一方、無機塗料の場合、費用はかかりますが耐用年数はウレタン塗料の倍以上あります。
塗料はそれぞれ一長一短ありますので、耐用年数や予算に合わせて適切なものを選ぶようにしましょう。
また、実際の金額は、使用塗料のほかに、自宅の面積や形状、目地の長さ、打ち替えと増し打ちどちらにするか、などによって変動します。メンテナンス時には、必ずご自宅用の詳細な見積もりを作ってもらいましょう。
ALC外壁のメンテナンスを行う際の注意点
ALCは非常に優れた建材ですが、メンテナンスを行う際には注意しなければならないポイントがあります。
ここでは必ず押さえてほしいポイントを3つご紹介しますので、時期が来た方はチェックしておきましょう。
下塗りは必ずALC用のものを使う
ALCを塗装メンテナンスする際は、他の壁素材よりも使用する塗料に注意しなければなりません。
下塗りがALCに合っているものでないと、塗料の性能が発揮されなかったり、将来的に剥がれやすくなったりしてしまうからです。
下塗は、メンテナンス時の基本的な3回塗りのうち1回目の塗り工程で、外壁材と上塗り塗料との間の接着剤のような役割を果たしています。
この下塗りの際は、塗る素材にあった下塗りが非常に重要です。
ALCに適した下塗りかどうかは、メーカーのホームページや塗料カタログの「適用下地」の欄を確認しましょう。
下地が弱っているときは下塗りを行う
ALCのメンテナンスをするとき、下地が弱っている場合は下塗りを行う必要があります。
外壁表面の古い塗膜が弱っていて剥がれやすそうだと診断されたり、すでに細かなひび割れが多数生じているような状態だった場合は、カチオン系塗料や微弾性フィラーなどの、補強効果のある下塗り材を選定してもらいましょう。
専門のメンテナンス業者であれば、ALCの状態に合わせた下塗り塗料を選定してくれます。
劣化状態が心配な方は、下塗りが必要かどうかを念のため聞いておき、そこで業者からの回答を貰いましょう。
外壁と一緒にメンテナンスしたい部分
ALC外壁をメンテナンスするときは、屋根や屋上防水、ベランダ防水も合わせてメンテナンスしておくと効果的です。
ALC外壁をメンテナンスしても、その上にある屋根や屋上が傷んで水が回っている状況だと、結局ALC外壁を弱らせてしまう原因になるからです。
ALCの塗装時期である築10年前後は、屋根などのメンテナンス時期と重なります。点検・見積もりをお願いするときは、自宅の全体をしっかり見てもらい、一緒にできる工事はまとめて実施すると経済的です。
特に、ALCのお家は軽量鉄骨造で、普通よりも少し大きい家が多いため、足場代金も他のお家より高額になりがちです。何回も足場を立てるとその分余計に費用がかかってしまうので、できるだけ一度に終わらせたいものです。
見積もり段階で業者に相談するなどして、外壁と一緒に屋根や防水部分もメンテナンスを検討しましょう。
ALC外壁のメンテナンス業者の選び方
ALC外壁は外壁素材と塗料との関係が難しく、専門の業者に適切な判断をしてもらう必要があります。ALC外壁は下地が弱っていた場合下塗りを行う必要がありますが、この判断も専門の業者でなければ困難です。
このような点から、ALC外壁のメンテナンスは専門知識と実績を持った業者に依頼することが最も重要です。具体的には、外注ではなく直接自社で施工を行っており、かつALC外壁のメンテナンス実績が豊富な業者を選定するようにしましょう。
さらに、ALC外壁のメンテナンスは塗料や足場代、その他諸経費などによって大きく相場が異なります。見積もりを貰った会社が1社だけだとその料金が適切かどうか判断できません。
ALC外壁のメンテナンスを行う際は、ぜひ数社から見積もりを取ってください。その上で、細かな工事内容や塗料、オプションサービスの料金などを比較し、適切な業者を選定しましょう。