モルタルは、水と砂とセメントを混ぜ合わせてできる建築材料のことです。使い道は様々ですが、外壁の仕上げ、タイル張りの下地、レンガの目地、ブロックなどの接着剤として使われることが多くなります。
今回は、そんなモルタルの基礎知識やDIYで使うときのポイントなどを説明していきます。また、モルタルと混同しやすいコンクリートやセメントとの違いについてもまとめていくので、モルタルのことを調べている人はぜひご覧ください。
モルタルの基礎知識
モルタルの原料は、水と砂とセメントです。セメントの割合を1と仮定した場合、砂を2~3程度混ぜ合わせて、水を加えてペーストしたものになります。また、混ぜ合わせるものによって、様々な種類があるため使い心地は変わってきます。
昔は住宅に使われることが多かったのですが、ひび割れや施工に時間がかかるなどのデメリットが多いため、使われる機会は減ってきました。ただし、現在もデザイン性が優れていることから、オリジナリティを出したいときに使われています。
モルタルの用途
モルタルは、屋外や屋内のどちらにでも使える建材で、主な用途は以下になります。
- 外壁の表面仕上げ
- 浴室や台所や腰壁の仕上げ
- レンガやブロックの目地材
- タイルの下地
- コンクリート壁の隙間を埋める
また、モルタルは職人が手作業で行うため、同じものを再現しにくくなっています。なので、オリジナルの要素を出したいときに上記の用途で使われます。
モルタルのメリット
ここからは、モルタルのメリットをご紹介していきます。モルタルにしかない魅力も多いため、詳しく見ていきましょう。
耐久性に優れている
モルタルは、水と砂とセメントでできているため、台風などの強風による飛散物がぶつかっても、簡単に壊れません。なので、台風が多い地域などではモルタルを外壁材に選ぶと安心できます。
防火性が高い
モルタルの原料である、水と砂とセメントはすべて不燃性です。なので、火災になった場合でも、すぐに燃え広がることはありません。また、火災が発生した場合でも、有毒ガスが発生しなくなります。
コーキング不要
モルタルは、外壁に使う場合継ぎ目がないので、コーキングの必要がありません。コーキングを行うと見た目が悪くなることもありますが、見た目が良いままで使えます。
模様が作れる
モルタルは意匠性の高さも魅力的です。凹凸を作り陰影を目立たせたり、光沢を目立たせたり、マットにしたり、様々なデザインにできます。また、職人が手作業で行ってくれるため、オリジナリティも出ます。
モルタルのデメリット
ここからは、モルタルのデメリットも知っていきましょう。デメリットを知っておくことで対策も取れるため、後悔することはなくなります。
ひび割れが起きやすい
モルタルは耐久性が高いものの、ひび割れしやすいというデメリットがあります。小さいひび割れが発生してしまうと、徐々に大きいひび割れになってしまうのです。
モルタルのメリットに防火性が高いというものがあります。ですが、防水性は低いためひび割れが発生すると、隙間から水が入り込み腐食やカビの原因になります。
ひび割れが発生すると、再塗装やフィラーの埋め込みなどのメンテナンスが必要になるため、定期的なメンテナンスが必要です。
既存外壁からモルタルへの変更が難しい
モルタルは、下地部分の処理が難しいため、既存の外壁をモルタルに変更することは難しくなっています。なので、基本的には新築時のみ外壁をモルタルにできます。
既存の外壁をモルタルにすることも可能ですが、費用が非常に高くなってしまうので、おすすめはできません。
モルタルの劣化具合の確認方法
ここからは、モルタルの劣化具合を確認する方法をご紹介していきます。どれくらい劣化しているのか分かることで、メンテナンスのタイミングが分かるので知っておきましょう。
水をかけると吸い込む
モルタルが劣化しているか判断したいときには、霧吹きなどを使ってモルタルに水をかけてください。かけた水が染みになった場合は、水を吸い込んでいるということなので、劣化が始まっています。
日当たりが良い場所ほど分かりやすいため、日当たりが良い場所で試してみましょう。反対に霧吹きをかけて、水玉になっている場合は、防水効果が活きているため劣化していません。
手に粉がつく
モルタルを触ってみて、モルタルと同じ色の粉が付く場合は、劣化が始まっています。この現象のことはチョーキングと言いますが、防水効果がある油分がなくなると、この状態になります。
手に粉が付いた場合は、防水効果がなくなっているため、できるだけ早くメンテナンスを行いましょう。
コケやカビが発生している
コケやカビが発生しているときは、モルタルが劣化しているときです。コケやカビが発生する場合、モルタルは水を吸い込んでいることになります。また、日陰になりやすい場所に発生しやすいです。
コケやカビが発生していると、外観を損なうだけでなく、耐久性も落ちてきていることになるので見落とさないようにしましょう。
ひび割れがある
モルタルにひび割れが発生しているときは劣化し始めています。ひび割れは塗装が弱まっているときに起こる現象です。ドアの周りや窓の付近が、ひび割れしやすいので確認しましょう。
表面が剥がれている
モルタルの表面が剥がれてきている場合は劣化が始まっています。モルタルは、雨風に晒され続けると付着力が低下してしまうため、表面は剥がれてしまうのです。
表面が剥がれて、下地が見えた状態で放置し続けると、内部が痛み始めてしまうため早めにメンテナンスを行いましょう。
モルタルとコンクリートとセメントの違い
ここまでモルタルについて説明してきましたが、コンクリートやセメントと何が違うのか分からないという人も多いかと思います。ここからは、モルタルとコンクリートとセメントの違いを説明していくので、正しく理解していきましょう。
モルタルについて
モルタルは、砂と水とセメントを混ぜ合わせて作った建材のことです。柔軟性があるため装飾性も高く、振動に強くなっています。
柔軟性、装飾性、振動に強いという特徴があるため、建物の外壁に使われることが多いです。職人の技術力が必要な建材で、高い技術力を持つ職人ほど、優れた装飾が可能になります。
コンクリートについて
コンクリートは、モルタルにさらに砂利を混ぜ合わせた建材のことです。モルタルに砂利を追加しているため、モルタルよりも強度が高く、強度が必要な建物の構造部分によく使われます。
他にも強度が必要な道路や、大きなビル、橋などの公共交通機関でも使われることが多い健在です。ただし、モルタルに比べて装飾性が劣るため、建物の外壁として使われることは少なくなっています。
セメントについて
セメントは、石灰石や石膏を焼いて作った粉末で、モルタルやコンクリートの原料として使われます。セメントは粉末状で保管できるので、使用する場所まで運んでから建材を作ることが可能です。
モルタルの仕上げの種類
ここからは、モルタルの仕上げの種類をご紹介していきます。モルタルと言っても、様々な種類があるため、見た目や風合いは変わってきます。自分好みの仕上げを知っておくことで、満足度は高まるので見ていきましょう。
吹き付けタイル
吹き付けタイル仕上げは、模様付けのために下地材を吹き付けていく仕上げ方法です。骨材を使わずに仕上げるため、ザラザラとした質感がなく、なめらかな凹凸模様とタイルのような光沢が目立ちます。
また、吹き付けタイル仕上げの中でも、凹凸が細かい中粒仕上げと、凸部が平で光沢が目立つ押さえ仕上げがあり、好みに合わせて選べます。
リシン
リシン仕上げは、リシンという骨材を混ぜた塗料をエアスプレーで外壁に吹き付けていく工法です。リシン仕上げは、ザラザラとした凹凸ができて、マットな質感になります。
スタッコ
スタッコとは、リシン吹き付けを厚く施工したもので、表面が凸凹でザラザラとしています。リシン仕上げより厚く施工するため、リシン仕上げの3倍程度の塗料が必要で、作業も増えるため費用が高くなってしまいます。
塗り壁
塗り壁は、職人が手作業で塗材を壁に塗りつけていく工法で、オリジナルの模様を作れます。職人のコテさばきやハケの使い方で仕上げ方を変えられますし、カラーバリエーションも豊富なため人気が高いです。
壁材にガラスや天然石を混ぜたり、タイルやレンガを組み合わせることも可能で、継ぎ目ができないというメリットもあります。ですが、工期が長くなる、汚れが目立ちやすいなどのデメリットもあるため注意しましょう。
モルタルのDIY時に必要なもの
ここからは、モルタルを使ったDIYを行うときに必要なものをご紹介していきます。モルタルのDIYは作業を開始すると、中断しにくいため、不足がないように準備しましょう。
- バケツ
- スコップ
- 計量用カップ
- コテ
- コテ板
- セメント・砂・水
モルタルのDIY時に必要なものは上記の5つです。バケツはモルタルを混ぜるときに必要ですが、大量のモルタルを練る場合は、トロ舟を使ったほうが効率よく混ぜられます。
スコップはモルタルを混ぜるために使いますが、大量に練る場合は先が尖っていないシャベルの方が簡単です。計量用カップは、セメントや砂の計量に使うため忘れないようにしましょう。
コテはモルタルを塗るときに使います。コテ板は作ったモルタルを手元に持っておくときに必要です。コテ板がないと作業効率がかなり悪くなるため、注意してください。
セメントは、砂が入っていないものを用意してください。砂はモルタル用のものがホームセンターなどで販売されています。水に関しては水道水で問題ありません。
また、モルタルを作ることが難しそうだという場合は、インスタントモルタルを選びましょう。インスタントモルタルは、モルタルの材料であるセメントと砂が適切な割合で配合されていて、水を加えて練るだけで使えます。
モルタルのDIY時に注意すること
モルタルのDIYは危険な作業もありますし、失敗してしまうことも多いため、事前に注意点を確認しておきましょう。
安全対策を行う
モルタルのDIY作業を行うときには、防水性のある手袋や安全ゴーグル、マスクなどを装着してください。湿った状態のモルタルは強アルカリ性なので、素手で触ってしまうと肌荒れの原因になりますし、目に入った場合は失明の危険もあります。
また、セメントと砂を混ぜているときに、粉末状のセメントを吸い込んでしまうことも考えられるため、マスクも忘れずに装着してください。子供やペットがいる家庭では、不用意に近づいて来ないようにしましょう。
作業工程を確認する
モルタルは、作業工程を事前に確認しておきましょう。作業を途中で中断することが難しく、作業後もモルタルが乾くまでに時間がかかるため、余裕を持って作業を行ってください。
周囲を汚さないために養生する
作業中に周囲をモルタルで汚さないように、養生しておきましょう。自宅にある新聞紙やマスキングテープで養生できます。また、作業中に道具を置く場所も養生しておくと、汚れなくなるため覚えておきましょう。
モルタルのDIY手順
モルタルのDIY時に必要なもの、事前に注意することを確認した後は、実際にモルタルのDIY手順を見ていきましょう。モルタルは手順をしっかり覚えておかないと、中断が難しいのでメモを取ることもおすすめです。
モルタルの作り方
- 砂とセメントを計量してムラがないように混ぜ合わせる
- 水を数回に分けて入れる
モルタルの作り方は簡単で、上記の手順で行えます。正確に計量すること、水を分けて入れて使いやすい硬さにすることが大切です。
注意点として、練り上げたモルタルはその日のうちに使い切る必要があるため、一度に大量のモルタルを練ると余ってしまう可能性があります。なので、使い切れる量をその都度練り上げていくことをおすすめします。
モルタルをキレイに塗る
モルタルをキレイに塗るためには、以下の手順で行いましょう。
- 塗る箇所を水でキレイに流す
- 塗らない箇所や汚したくない箇所はビニールシートなどでマスキングする
- 右利きの人は左上から右に、左利きの人は右上から左に移動しながら塗る
- 下から上に持ち上げるように塗る
- 一度に大量に塗らず、上下左右などの部分毎に塗る
- 全体が濡れた後に平らになるまでならす
モルタルを塗るときはコテを使いますが、コテが進む方向に若干浮かせることで塗りやすくなります。また、仕上げにならすときは、コテを壁と平行にして使うとキレイにならせるので覚えておきましょう。
モルタルを乾燥させる
モルタルを塗り終わった後は乾燥させることになりますが、急激に乾燥させてはいけません。モルタルは急激に乾燥すると、ひび割れが発生することがあるため、徐々に乾燥していくようにしましょう。
急激な乾燥を防ぐためには、ビニールシートを敷いたり、湿らせた布を敷きましょう。この工程を忘れてしまうと、ひび割れの可能性が高くなるため、注意してください。
モルタルを業者に頼んでリフォームする費用
モルタルの外壁を使っていて、劣化が目立ってきたときや、見た目に飽きてきて他のデザインに変更したいときはリフォームを検討しましょう。モルタルを業者に頼んでリフォームするときの費用は以下になります。
リフォーム方法 | 費用 |
---|---|
塗装 | 70万~100万円 |
カバー工法 | 140万~260万円 |
張り替え | 180万~280万円 |
塗装、カバー工法、張り替えなどリフォーム方法によって、必要な費用が変わってくるため、それぞれどんな違いがあるのか詳しくみていきましょう。
塗装
モルタルは、防水性のためにモルタルの上に仕上げ剤を塗っていますが、時間が経つと仕上げ剤が剥げたり、小さなひび割れが発生します。この仕上材を再塗装することを塗装リフォームと言います。
他の方法よりも費用が抑えられて、70万~100万円程度でリフォームできます。モルタルのまま使い続けたいというときにおすすめのリフォーム方法です。
カバー工法
カバー工法は、モルタルからサイディング外壁に変更するときに使われる方法です。モルタルの上からサイディングを取り付ける方法で、工事期間が短くて済みます。
ただし、塗装と比べると必要な工程や材料が多いため、費用は140万~260万円程度かかります。
張り替え
既存のモルタルが傷んでいて、カバー工法をする強度がない場合は、外壁を剥がしてサイディングを取り付ける張り替えを行います。他の方法と比べると、費用が高くなりますし、工期も長くなりますが、内部の防水紙なども取り換えられます。
新しい外壁になるため、耐用年数も長くなりますが、費用は180万~280万円と高額になってしまいます。
まとめ
今回は、モルタルの基礎知識、DIYで使うときのポイント、モルタルのリフォーム費用などをご紹介してきました。モルタルはコンクリートやセメントなどと混同しやすい健在ですが、特徴は全く違うため覚えておきましょう。
また、モルタルを外壁に使いたい場合は、職人の腕によって仕上がりに差が出てしまうので、できるだけ信頼できる職人を見つけることが大切です。実績や経験が豊富な職人に依頼すると、オリジナリティ溢れるモルタル外壁になるので、一度調べてみましょう。