屋根の形は7種類あります。各屋根はデザイン性、メンテナンス性、耐震性、費用が異なるため、屋根の形を決める時はどの要素を重視するかが大切です。この記事では屋根の形の種類と特徴、費用、屋根材の選び方をお伝えします。
屋根の形は7種類
屋根の形は7種類あります。以下に屋根の形の種類と特徴、合わせやすい屋根材、メリット、デメリットをお伝えします。
尚、ご紹介する屋根材の特徴と耐用年数を下記の表にまとめましたのでご覧ください。
屋根材 | 特徴 | 耐用年数 |
和瓦 | 日本家屋に馴染む耐用年数が長く丈夫重量があるのが難点 | 約50年〜 |
洋瓦 | 海外住宅に用いられた瓦洋風のデザイン・色合い | 約50年〜 |
スレート | 軽量リーズナブルな価格現在主流の屋根材 | 約15〜25年 |
ガルバリウム鋼板 | 軽量で耐震性が高い耐久性が高いメンテナンス回数が少ない | 約20〜30年 |
アスファルトシングル | 軽量で耐震性が高い天然石仕上げなど意匠性が高い素材の特性から割れない複雑な屋根形状にも対応 | 約20〜30年 |
切妻屋根
以下に切妻屋根の形の特徴、合わせやすい屋根材、メリット、デメリットをお伝えします。
形の特徴
切妻屋根は屋根面(斜面)が二面で構成されている日本住宅の代表的な屋根形状になります。切妻屋根の外観的特徴は建物の正面から見ると屋根のところが三角形の形になっているところです。雨漏りのリスクが少なくメンテナンス費用も低い屋根です。
合わせやすい屋根材
合わせやすい屋根材 |
和瓦 |
洋瓦 |
スレート |
ガルバリウム鋼板 |
アスファルトシングル |
優れているところ・劣っているところ
優れているところ | 劣っているとこ |
・ 新築、リフォーム時の費用を抑えられる ・豊富な種類の屋根材と相性が良い ・太陽光パネルの設置がしやすい ・和風。洋風どちらにもマッチする ・施工が容易で雨漏りのリスクが少ない | ・一般的な形状のためデザイン性に乏しい ・ 妻側(屋根面がない箇所)は雨や日光の影響を受けやすい |
寄棟屋根
以下に寄棟屋根の形の特徴、合わせやすい屋根材、メリット、デメリットをお伝えします。
形の特徴
寄棟は屋根面(斜面)が四面ある形状の屋根です。寄棟も現在の住宅に多く採用される屋根形状となっています。寄棟には屋根頭頂部の棟の他に屋根面の継ぎ目の箇所にある隅棟(または下り棟)があります。
合わせやすい屋根材
合わせやすい屋根材 |
和瓦 |
洋瓦 |
スレート |
ガルバリウム鋼板 |
アスファルトシングル |
優れているところ・劣っているところ
優れているところ | 劣っているところ |
・ 屋根が四面構成のため耐風性に優れる ・ 和風、洋風共に相性が良い ・ 豊富な種類の屋根材を選べる | ・ 屋根裏のスペースの確保が難しい ・ 棟板金の損傷が多い ・ 棟部の損傷により雨水が侵入するリスクがある ・ 切妻屋根と比べてコストが高くなる ・ 軒の出が少ないと雨の影響を受けやすい ・ 太陽光パネルの設置が難しい |
片流れ屋根
以下に片流れ屋根の形の特徴、合わせやすい屋根材、メリット、デメリットをお伝えします。
形の特徴
片流れは屋根面(斜面)が一面で構成される屋根です。シンプルな屋根形状のため、建物の全体の外観も非常にすっきりとした印象を受けます。現代的なデザインで洋風住宅と相性が良いです。
合わせやすい屋根材
合わせやすい屋根材 |
洋瓦 |
スレート |
ガルバリウム鋼板 |
優れているところ・劣っているところ
優れているところ | 劣っているところ |
・ モダンなデザイン ・ 施工が容易でコストも安価 ・ 太陽光パネルの設置がしやすい ・ 屋根裏スペースの確保がしやすい | ・ 雨量が多いため雨水が侵入しない施工が重要 ・ 雨漏りのリスクが高い ・ 雨樋の容量に注意する必要がある ・ 屋根のかからない方角は劣化の影響を受けやすい |
入母屋屋根
以下に入母屋屋根の形の特徴、合わせやすい屋根材、メリット、デメリットをお伝えします。
形の特徴
入母屋屋根は切妻と寄棟が合わさったたような形状をしています。上部は切妻屋根の形状、下部は寄棟屋根の形状となっています。伝統的な日本家屋に入母屋屋根は用いられ、格式の高さを感じさせる屋根形状です。
合わせやすい屋根材
合わせやすい屋根材 |
和瓦 |
スレート |
優れているところ・劣っているところ
優れているところ | 劣っているところ |
・ 和風建築に相性が良い ・ 格式のある外観 ・ 屋根裏スペースの確保がしやすい ・ 通気が取れる | ・ 瓦は強風による飛散や割れに注意 ・ 屋根の継ぎ目は雨漏りのリスクがある ・ 施工できる業者が少ない ・ 複雑な形状のため施工費用がかかる |
方形屋根
以下に方形屋根の形の特徴、合わせやすい屋根材、メリット、デメリットをお伝えします。
形の特徴
四つの屋根面(斜面)が三角形となっているのが方形屋根です。方形屋根は屋根頭頂部にある棟がない屋根形状となっています。四つの三角形の形をした屋根面は同じ角度で傾斜しているため、建物の形状も正方形となっています。
合わせやすい屋根材
合わせやすい屋根材 |
和瓦 |
洋瓦 |
スレート |
ガルバリウム鋼板 |
アスファルトシングル |
優れているところ・劣っているところ
優れているところ | 劣っているところ |
・ 和風・洋風共に相性が良い ・ 構造が頑丈で耐風性に優れる ・ 豊富な種類の屋根材を選べる | ・ 建物形状を正方形にする必要がある ・ 太陽光パネルの設置が難しい ・ 屋根裏のスペースの確保が難しい ・ 棟板金の損傷に注意が必要 ・ 軒の出が少ないと雨の影響を受けやすい |
陸屋根
以下に陸屋根の形の特徴、合わせやすい屋根材、メリット、デメリットをお伝えします。
形の特徴
陸屋根は屋根面が平らに仕上げられている形状の屋根です。ビルやマンション、鉄骨造で採用される屋根形状で、雨水の排水の観点から木造の建物に採用されるケースは少ないです。陸屋根は建物形状がキューブ状になるため、モダンなデザインの外観が特徴です。
合わせやすい屋根材
陸屋根は屋根材を葺いて仕上げるのではなく、アスファルト防水やシート防水、防水塗装をして仕上げます。
アスファルト防水:屋根材の下地にも使われるルーフィングを敷設して防水する方法
シート防水:ゴムや塩ビでできているシートを敷いて防水する方法
防水塗装:FRP防水塗料やウレタン防水塗料を塗布して水の侵入を防ぐ方法
防水施工の種類 | 耐用年数 |
アスファルト防水 | 約15〜20年 |
シート防水 | 約10〜20年 |
防水塗装 | FRP:約12〜20年 ウレタン:約10〜14年 |
優れているところ・劣っているところ
優れているところ | 劣っているところ |
・ 屋上のスペースを有効活用できる ・ 屋上緑化や屋上庭園を設けることができる ・ モダンなデザイン | ・ 太陽光パネルの設置は不向き ・ 雨水の排水設計に注意しないと雨漏りを起こす ・ 排水のゴミ詰まりを起こす ・ 定期的な防水層のメンテナンスが必要 ・ 傾斜がないため積雪対策が必要 ・ 木造は屋根と外壁の取り合い部から水が侵入する恐れがある |
はかま腰屋根
以下にはかま腰屋根の形の特徴、合わせやすい屋根材、メリット、デメリットをお伝えします。
形の特徴
切妻屋根の妻側(屋根面がない箇所)上部に傾斜をつけて部分的に屋根面を作った形状がはかま腰屋根です。北側斜線制限や道路斜線制限など建物高さの制限の際に用いられることがあります。
合わせやすい屋根材
合わせやすい屋根材 |
和瓦 |
洋瓦 |
スレート |
ガルバリウム鋼板 |
アスファルトシングル |
優れているところ・劣っているところ
優れているところ | 劣っているところ |
・ 高さ制限の際に柔軟な対応ができる ・ 法律の制限を抑え効率的な空間利用が可能 ・ 豊富な種類の屋根材と相性が良い ・ デザイン性に優れる ・ 太陽光パネルの設置がしやすい | ・ 切妻屋根と比べると屋根面積は増える ・ 棟部が多少複雑なため浸水防止施工が必要 ・ 軒の出が小さいと雨や日光の影響を受けやすい ・ 複雑な形状のため切妻よりはコストが上がる |
屋根の種類ごとの価格を比較
屋根の種類 | 費用 |
切妻屋根 | 比較的安い |
寄棟屋根 | 一般的 |
片流れ屋根 | 安い |
入母屋屋根 | 高い |
方形屋根 | 一般的 |
陸屋根 | 安い |
はかま腰屋根 | 一般的 |
屋根形状のコストを抑えるのなら以下の順になります。
- 陸屋根
- 片流れ屋根
- 切妻屋根
- 寄棟屋根
ただし、屋根形状のコストは屋根面積と屋根材によって費用が変わります。複数の業者から見積もりをとって比較することが重要です。
屋根の形を変更する工事の費用
項目 | 費用 |
構造計算 | 約10〜20万円 |
確認申請 | 約20〜30万円 |
屋根形状の変更は構造計算と確認申請が必要なため、工事費用の他に別途費用がかかります。
屋根の種類 | 費用 |
切妻屋根 | 約200〜400万円 |
寄棟屋根 | 約300〜500万円 |
片流れ屋根 | 約200〜350万円 |
陸屋根 | 約300〜500万円 |
屋根形状の変更は大規模工事となるため住みながら工事することはできません。工事期間中は仮住まいになるため賃貸を借りる場合は家賃の支払いも必要です。
屋根の修理方法と費用相場
屋根修理方法 | 費用相場 |
葺き替え | 約180〜200万円 |
カバー工法 | 約150〜180万円 |
屋根塗装 | 40〜80万円 |
瓦のズレ・割れ補修 | 約5~30万円 |
棟板金の交換 | 約3〜10万円 |
雨樋の交換・補修 | 約15〜50万円 |
雨漏り調査 | 約10〜30万円 |
足場設置 | 約800〜1,200円/㎡ |
屋根の修理は工事する範囲や使用する材料によって変わります。修理する範囲が狭く単価では計算できない場合は一式と表記する場合もあります。
屋根のメンテナンススケジュール
屋根材の種類によってメンテナンススケジュールが異なります。以下に屋根材ごとのメンテナンススケジュールを詳しくお伝えしていきます。
スレート
スケジュール | 修理項目 | 修理費用 |
10年目 | 点検 屋根塗装 | 無料 約40〜80万円 |
20年目 | 点検 屋根塗装 | 無料 約40〜80万円 |
30年目 | 屋根葺き替え | 約60〜220万円 |
10年周期に塗装を行います。塗装は主に美観を目的としていますが、スレート表面の塗装が劣化すると水を吸収しやすい状態になります。水を吸収しやすい状態になると劣化を早める要因になりますので、定期的に塗装をしておくと長持ちします。
ガルバリウム
スケジュール | 修理項目 | 修理費用 |
10年目 | 点検 シーリング打ち替え | 無料 約900〜1,200円/m |
15〜20年目 | 点検 シーリング打ち替え 屋根塗装 | 無料 約900〜1,200円/m 約40〜80万円 |
25〜30年目 | シーリング打ち替え 屋根葺き替え | 約900〜1,200円/m 約60〜220万円 |
ガルバリウム鋼板はメンテナンスフリーと呼ばれていますが、10年ごとに状態を点検してもらうことをお勧めします。25年目からはルーフィングが劣化し、防水性が低下していますので葺き替えが必要です。
瓦
スケジュール | 修理項目 | 修理費用 |
10年目 | 点検 | 無料 |
20年目 | 点検 | 無料 |
30年目 | 屋根葺き替え | 約60〜220万円 |
瓦は耐用年数が50年以上と耐久性の高い屋根材のため、屋根材自体の劣化はそこまで心配する必要がありません。ただし、風に煽られて瓦がズレたり、何かの衝撃で割れたりすることもあるので、定期的に点検をしておきましょう。
屋根の形や屋根材の決め方
ここでは屋根の形や屋根材を決めるポイントについてお伝えしていきます。
屋根の形を決めるポイント
屋根の形を決めるポイントを以下に記しましたのでご覧ください。
- デザイン性で決める
- 予算で決める
- メンテナンス性や雨漏りリスクを重視して決める
デザイン性を重視する場合は建物のテイストと合う屋根の形にしましょう。ローコストに抑えたいという方は片流れがお勧めです。屋根の形は住み心地も関係してきますので、雨漏りのリスクも考慮した形を選ぶことが大切です。
屋根材を決めるポイント
屋根材を決めるポイントを以下にまとめましたのでご覧ください。
- 耐震性を重視して決める
- デザイン性で決める
- メンテナンス性(耐用年数)で決める
- 予算で決める
耐震性を重視する場合はガルバリウム鋼板やアスファルトシングルといった軽量の屋根材を選ぶといいでしょう。ガルバリウム鋼板とアスファルトシングルは天然石を吹き付けた装飾性の高い屋根材もありますのでお勧めです。
屋根の種類で工事費用が変わることを知っておこう
屋根の形は7種類あり、どれも一長一短あるため、重視したい特徴を活かせる屋根を選ぶことが大切です。屋根は定期的にメンテナンスが必要で、屋根材の違いによって修理する回数や方法が違います。どんな修理があるのか、どれくらい費用がかかるのかなど事前に把握しておきましょう。