バリアフリー

洗面所をバリアフリーで使いやすく|上手にリフォームするには

洗面所は生活のリズムを切り替える重要な場所です。身支度が整うにつれて、活動するモードにスイッチが切り替わります。普段何気なく使っている洗面所でも、疲労やケガなどが原因で、前かがみになる姿勢が苦痛に感じる時があるはずです。

将来的なことも考えれば、洗面所のバリアフリー化は避けられません。もしリフォームしようかと迷っているのであれば、この記事を最後までご覧ください。バリアフリーのポイントや工事の内容、金額の相場についてお伝えしますので、選択肢の一つとしてお役立てください。

洗面所をバリアフリー化するメリット

身体機能が低下すると、洗面台での姿勢を維持することが苦痛になります。一般的なご家庭であれば、ユニットタイプの洗面化粧台が据え付けられていますが、使いにくくなってからバリアフリー化するのでは遅すぎるのです。

今は大丈夫だと思っていても、加齢による身体の衰えは必ずやってくるものです。ですから将来を見越してバリアフリー化していれば、一時的に身体機能が低下しても身体の負担を軽減できるでしょう。

身支度のわずらわしさを解消

余程ズボラな人でもない限り、外出前は必ず身支度するものです。外出しない時でも、休息から活動にモードを切り替えるためには、起床後の洗顔と歯磨きは欠かせません。しかし洗面所が使いにくいとどうなるでしょうか。外出が必要なければ身支度から遠ざかってしまいます。

洗面所での身支度は水で身を清めることと、鏡を使って身なりを整えることに大別されます。この二つの使い勝手を良くすることと、転倒防止対策を同時にクリアすれば、身支度のわずらわしさから解放されるでしょう。

体の負担が軽くなる

体の負担は高齢者のメンタルヘルスに少なからず影響を与えます。ですから身支度が面倒になると、外出する気力を失って内向的な思考が強くなるのです。よって気分を切り替えて生活にメリハリをつけるためにも、できるだけ負担を軽減しなければいけません。

ムリな体勢や一定の姿勢を保つこと、立ちっぱなしなどの要素を排除することが、洗面所をバリアフリーにする目的です。基準に沿ってリフォームするだけで、体と心の負担をかなり減らせるでしょう。

ヒートショック対策に有効

洗面所と他の部屋の温度差は、洗面所のバリアフリーに直接関係するものではありません。しかし一般的な家庭では、洗面所と脱衣所は供用されているので、浴室との温度差をできるだけ解消する必要があります。したがって洗面所をバリアフリーにリフォームする時には、断熱や暖房の設置をセットで検討することをおすすめします。

将来的な使いやすさ

高齢化するにつれて、新しいことを覚えて慣れるまでに時間がかかります。よって土壇場になって慌てないためにも、早いうちに洗面所をバリアフリーにしてしまいましょう。必要になってから対応すればよいという考えもありますが、将来を見据えたバリアフリー化は、疲れが溜まっている時や一過性の病気の備えにもなります。

また年を取るまでに使いやすく改修を続ければ、完成度が高くバリアフリー性に富んだ洗面所にできるでしょう。

洗面所のバリアフリーはここがポイント

何事においても、ポイントから外れた対策は十分な効果が得られません。洗面所のバリアフリーリフォームは、バリアフリーの王道である転倒防止対策はもちろんのこと、洗面器具の配置や広さの確保が要になります。

なおユニバーサルデザインを採用すれば、誰もが使いやすい洗面所のリフォームが実現できるでしょう。

ユニバーサルデザインなら家族で共有できる

洗面所のバリアフリーで一番問題になるのは、洗面台の高さです。背の高い人が立って使用する高さと、小柄な人が車椅子で使用する高さでは、15 cmほどの差があります。車椅子で使う高さに固定してしまうと、背の高い人が立って使うには低すぎる位置です。

ユニバーサルデザインの洗面台では、使用する人に応じて高さを変えられる昇降式がラインナップされています。床面からの高さを65cmから80cmの範囲で調整できるので、家族全員が無理のない姿勢で使えるように工夫されています。

できるだけ手前に配置する

車椅子や椅子に座った状態では、洗面台の下側に足が入るスペースを作っても、洗面ボウルの奥側まで手が届きません。座った状態で手を前方に伸ばした場合、前方60cmと側方75cmまでが手の届く範囲なので、人の手で操作するものはできるだけ手前にセットします。

洗面台の照明やコンセントなども手元に配置し、蛇口は手前に引き寄せられるホースタイプに変更すれば、さらに使い勝手が良くなるでしょう。またスイッチに触れるだけで出水や止水、水やお湯の切り替えが操作できるようになれば、ハンドルで調整する負担を軽減できます。

スペースを広く取る

洗面台がバリアフリーでも、洗面所への出入りが面倒なだけでストレスを感じてしまいます。よって洗面所を車椅子でムリなく使うには、スムーズに方向を変えられる程度のスペースを確保しましょう。車椅子が180度回転するには、最低でも170cm×140cm必要なので、総合的に使い勝手を良くするためには、部屋の拡張も考えなくてはいけません。

また出入り口も間口を広げて通りやすくしましょう。850mm~950mm以上の開口部を設ければ、余裕を持った出入りができるようになります。

転びにくくする

足腰が弱っている方にとっては、ほんの小さな段差でも転倒する原因になります。また立ちっぱなしの状態も足腰が疲れるため、その後の歩行に影響を与えてしまいます。そんな歩行時の転倒を防ぐためにも、段差の解消とあわせて手すりを設置しましょう。

床を滑りにくくすることも、転倒防止には有効な対策です。しかし滑り止めが強すぎると引っかかって転んでしまうので、適度な素材を選びましょう。

洗面所のバリアフリーはどんな工事なのか

洗面所のバリアフリーでは、間取りの変更以外は大がかりな工事は必要ありません。洗面所に十分な広があれば、必要な部分を改修するだけで工事は終わります。ただ一つ気を付けたいのが、今現在の身体能力を基準に対策を選別すると、完成度の低いバリアフリーになってしまうことです。

ポイントをつまみ食いしたバリアフリー対策では、アンバランスな効果しか得られないために、不足分を補う追加工事が発生してしまうでしょう。後悔しないためにも、セオリー通りの工事をおすすめします。

洗面台の改修

バランスの良い使い勝手を重視するなら、住宅設備メーカーの洗面台がおすすめです。洗面台と鏡や収納がユニットになっていますので、充実したバリアフリー機能が日々の身支度をサポートしてくれます。

狭いスペースを有効活用したい場合は、洗面所のコーナーに設置するタイプが選べます。設置する間口は70cm四方ですが、正面の幅は150cmと十分な広さを確保できるので、狭さを感じることはないでしょう。

鏡の変更

一般的な洗面台の鏡は、立ったままで使うことを想定しているので、車椅子で使うには高すぎる位置にあります。座ったままで鏡を使うには、できるだけ低い位置に鏡を設置するのがベストです。ですからバリアフリーのユニット型洗面化粧台では、洗面ボウルの上面から隙間を空けずに鏡をセットしています。

他にも鏡を手前に引き出せたり、下向きに傾斜が付いている鏡などがあり、無理のない姿勢で身支度を整えられる環境を作り出せます。

転倒防止

洗面所のドアの敷居が段差になっている場合は、真っ先にリフォームで解消しましょう。敷居を撤去した後に床板を張り替えて、ドアの下の隙間を補修するだけで完了します。あわせて洗面台まで手すりを設置すれば、つたい歩きができるので転びにくくなります。

また滑って転倒する可能性を減らすために、床材を滑りにくい素材に変更しましょう。クッション性が高い素材を使えば、万が一転倒してもケガのリスクが減らせます。

間取りの変更

洗面所の隣に収納やデッドスペースがあれば、リフォームによって洗面所を広げられます。リフォーム後の洗面所の形状によっては、洗面台の設置する位置を変えることで、さらにスペースを確保できる可能性があります。

しかし間取りの関係上、部屋の広さを変えられない時はどうすればいいでしょうか。そんな時は洗面所のレイアウトを変更して、スペースが確保できるか確かめるのです。例えば洗濯機が据え置かれている場合、置き方を変えて広さを確保してみましょう。

洗面所のバリアフリーにかかる費用はいくら?

バリアフリーの必要性や便利さはわかっても、やはり気になるのがお値段です。個別の工事ではそれほど高い費用でなくても、すべてリフォームするとなると、それなりの金額になってしまいます。

できるだけすべての対策をするべきですが、予算が足りなくなっては何もできません。そんな時はムリしない範囲で、数年に分けた改修計画でバリアフリー化してください。なお工事の内容や洗面台の種類によって、価格が変化しますのでご注意ください。

洗面台をバリアフリーに

バリアフリータイプの洗面台に交換するには、古い洗面台を取り外して、新しい洗面台に付け替える工事費がかかります。概ね10万円から15万円が費用の相場になりますが、補修工事が発生した場合は別途料金が必要です。洗面台の本体価格が10万円から35万円程度ですので、リフォームの総額は20万円から50万円ほどになります。

転倒防止対策

転倒のリスクを少なくするには、最低でも三つの対策を実行します。出入り口の段差を撤去する工事では、敷居の撤去とドアの改修で3万円から5万円が必要です。滑り対策で床材を変更する場合は、室内の広さにもよりますが5万円から10万円が相場になります。手すりの設置では、手すりの長さを考慮しても10万円もあれば十分でしょう。

スペースの確保

車椅子での利用を考慮した改修では、間口の変更と室内空間を改修工事で確保します。軽い力で開閉ができる引き戸への変更は3万円から5万円、出入り口を広げるには20万円から25万円程度が費用の目安です。洗面所を広くする工事では15万円から35万円が施工費の相場になります。

ヒートショック防止

部屋を断熱施工すれば根本的なヒートショック対策になります。しかし工事費が1㎡あたり4千円から3万円であり、2週間から1か月の工事となるため現実的ではありません。したがってより経済的にリフォームするのであれば、暖房機器を設置する方法を選ぶと良いでしょう。

洗面所専用の暖房機の取り付けは、工事費込みで4万円から6万円が相場です。また浴室と洗面所の暖房を、浴室乾燥機の機能でまかなうこともできます。価格は工事費込みで8万円から15万円程度になります。

まとめ

加齢で体の動きが不自由になると、今までは何でもなかったことが障害になってしまいます。普段通りに生活したくても、思い通りにならないことに、もどかしさを感じてしまうでしょう。よって心の健康を保つためにも、洗面所のバリアは積極的に取り除かなければいけません。

すべての人々が快適に暮らせるようにすることが、バリアフリーの目的です。ユニバーサルデザインの洗面台でリフォームすれば、家族全員で共有できる洗面所に生まれ変わります。バリアフリーのポイントを押さえたリフォームで、洗面所を使いやすくしてください。