外壁塗装・外壁

石灰モルタルの基礎知識とリフォーム活用術

石灰モルタルは人と自然に優しい建材で、作り方や使い方も難しくないので、DIYで自宅の内装や外装をリフォームしたい方にはうってつけの素材です。材料もホームセンターで購入できますので、道具さえ揃えば誰でも簡単に使いこなせます。

仕上げのデザイン性も優れているので、壁の上塗りとして使えば、世の中に二つとない味わい深い仕上がりを楽しむことができるでしょう。そんな石灰モルタルの基礎知識とリフォーム活用術をお伝えしますので、ぜひとも参考になさってください。

石灰モルタルの特徴

石灰モルタルは紀元前から使われていて、壁材の中でも非常に長い歴史があります。自然由来の素材が使われていますので、環境や人体に優しいエコな建材として用いられています。まるで生きているかのような性質を持ち、年を重ねるごとに風合いを増すので、人間との相性もいい材料です。

呼吸をする

石灰モルタルの表面には、スポンジのような小さな穴が開いています。この小さな穴は湿気を取り込んだり吐き出したりするので、余分な湿気を吸収する一方で、乾燥した時には溜め込んだ湿気を放出します。石灰モルタル自体が自然に湿度を調節するので、結露を抑えてカビの発生を予防するだけでなく、室内の乾燥も防いでくれるのです。

高気密住宅では、冬場の結露や梅雨時のカビに悩まされますが、調湿機能を持った石灰モルタルを内壁に使うことで、湿度を一定に保つことができます。

カビに強い

石灰モルタルは消石灰が原料のため、アルカリ性でカビに強い塗り壁材料と言われています。外部から侵入してきたカビの繁殖や、調湿で防ぎきれなかったカビの発生も、強アルカリによって抑え込んでくれます。

ただし比較的カビに強い石灰モルタルですが、樹脂を混合した製品を使うとその特性が失われてしまうので、材料選びには注意が必要です。

年々強度が増す

石灰モルタルの原料である消石灰は、二酸化炭素と結びつくことで石灰岩に変化します。何十年もかけてゆっくり二酸化炭素と結びつきますので、年々強度が増していくのです。一般的な壁材では経年劣化により耐久性が落ちるので、短いスパンでリフォームを考えなくてはいけません。しかし石灰モルタルは強さが増すだけでなく変質もしないので、劣化による大規模な改修の心配はないでしょう。

長い年月を経ることで汚れがつくこともありますが、それ自体が独特の重厚感を演出してくれるので、年々強度と共に味わいも増していきます。また石灰自体が不燃性の材料であることから、防火対策にも役立ちます。

消臭を助ける

石灰はスポンジのような多孔質ですので、ニオイのもとを微細な穴に吸着して分解します。あわせて強アルカリが臭いの原因菌に作用するので、イヤな臭いを元から断ってくれるのです。またシックハウス症候群を引き起こすホルムアルデヒドについても、小さな穴で捕まえて分解してくれます。室内には建具やカーテンなどのアレルゲンが数多くありますので、アレルギー対策として検討する価値は十分にあるでしょう。

石灰モルタルの用途

石灰モルタルは特有の機能や特性を活かした先人の知恵によって、室内室外を問わずあらゆる場所に用いられています。自然な風合いによる造形美を上手に使いこなせば、室内外のデザイン性がアップするでしょう。

レンガの接着剤

石灰モルタルはセメントよりも柔軟性があるため、レンガやタイルなどの接着剤として使われています。気温の変化による膨張や収縮、基礎部分に起こる多少の歪みや沈下でも、簡単に割れたりひびが入ったりすることはありません。石灰モルタルの目地には適正な厚みがあり、約10 mm ~12 mm 程度が最適とされています。

極端に薄い目地や余りにも広い目地にしてしまうと、見た目のバランスが悪いだけでなく、接着強度にも影響を与えてしまいます。DIYでリフォームにチャレンジする際は、目地の厚みに注意しましょう。

外壁

ヨーロッパでは古くから石灰モルタルが外壁材として使われてきました。コテで塗りつけて仕上げる技法を駆使して、個性的でバリエーションに富んだ模様に仕上げます。あえて不規則に塗りつけて意外性を利用する仕上げや、表面を粗く仕上げる技法などで自然な風合いを楽しむのがヨーロッパ風です。

塗り始めた時から乾燥していきますので、壁の一面を塗り始めたら終わるまで作業を止めることはできません。外壁では汚れの付着が気になりますが、模様を活かしたまま表面を磨き上げることもできるので、石灰モルタルの風合いを残しつつ汚れを付きにくくすることも可能です。

内壁や天井

室内の壁や天井を石灰モルタルで仕上げることは、デザイン性だけでなく石灰モルタルの持つメリットの恩恵を受けられます。調湿や消臭だけでなくアレルギー物質の分解なども期待できるため、室内空間を快適にしたいのであれば積極的に使いたいものです。

自然な風合いに仕上げることが基本なので、大雑把でランダムくらいがちょうどいい仕上がり具合です。DIYにチャレンジすれば、世界で一つだけの味わいのある内装を表現できるでしょう。

石灰モルタルの作り方

石灰モルタルは正しい方法さえ覚えてしまえば、誰でも簡単に作れます。材料の配合比率と、手順さえ間違えなければ失敗することはありません。ただし化学反応を伴う作業になりますので、手袋やゴーグルなどを事前に用意してください。

材料の準備

石灰モルタルに必要な原料は、生石灰と目の細かい砂と水だけです。生石灰(せいせっかい)と砂はホームセンターで売っています。作る量に応じて容器やシャベル、スコップなどを用意してください。また施工内容に合った道具選びも事前に行うようにしましょう。

生石灰を化学反応させる

石灰モルタルを作るには、生石灰と砂を1:3の割合で混合させます。まずは生石灰を消和反応で消石灰に変化させなければいけません。混ぜ合わせる容器に化学反応の影響を与えないために、容器内に砂山を作り受け皿として使います。砂山の頂点をくぼませて生石灰を入れてください。

生石灰が入った砂山のくぼみに水を入れます。しばらくすると消和反応が始まって生石灰が膨らんでくるので、反応している生石灰に砂をまんべんなくかけてください。ある程度時間をおいて熟成させると、石灰モルタルの原料である消石灰が完成します。生石灰を化学反応させて消石灰を作るのが面倒な方は、ホームセンターで売っている消石灰を購入してください。

材料を混ぜる

出来上がった消石灰と受け皿になっている砂をよく混ぜ合わせます。さらに水を加えてこねるのですが、仕上がりや強度にムラが出やすくなりますので、均等に混ぜ合わせるように気をつけましょう。左官職人さんの場合は、ミキサーを使って短時間で均等に混ぜ合わせますが、人力で混ぜる場合は時間と根気が必要なので覚悟を決めてください。

混ぜている間から乾燥し始め、さらに二酸化炭素に触れると硬化が始まりますので、あまり時間をかけずに手際よく混ぜるように注意しましょう。

もち米のお粥で強度が増す

石灰モルタルを練り上げるには、一般的に普通の水道水を使います。それだけで十分な強度を得られますが、水の代わりにもち米のおかゆを薄く溶いた液体を混合すると、さらに強度が増した石灰モルタルが誕生します。もち米の成分がモルタルの性質をより安定化させ、耐水性も増すので劣化に強くなるのです。

古代中国ではもち米液を配合したモルタルが使われており、万里の長城が未だに崩れないのは、もち米モルタルの強度に由来しているという研究結果が報告されています。一度DIYでチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

石灰モルタルでリフォーム

使い勝手の良い石灰モルタルですから、DIYでリフォームするには最適な建材です。外壁や内装のリフォームでは仕上げに若干のコツが必要ですが、表面の起伏による風合いや変化を活かせば、オリジナリティーに溢れるリフォームが実現できます。

外壁を石灰モルタルで洋風に

ヨーロッパの地中海地方では、真っ白い外壁にパターンが施された建物が一般的です。コテの跡をあえて残す技法で壁材が塗られており、独特の雰囲気を醸し出しています。ランダムなパターンが多い印象ですが、扇型などの規則性があるパターンも見られます。

外壁を石灰モルタルに塗り替えるためには、塗りつける面の素材がキーポイントになります。未塗装のRC外壁であれば、汚れやカビを落として塗りつけられますが、サイディングやガルバリウム鋼板などは下地作りから始めなければなりません。大がかりな工事が必要な場合は、リフォームのプロに相談しましょう。

レンガで塀を作る

レンガ積みの塀や花壇は、ヨーロピアンなガーデニングには欠かせないアイテムです。誰でも簡単にできるイメージがありますが、綺麗に仕上げるためには基礎部分をしっかり作り込む必要があります。コンクリートの基礎を作るためには、水糸をはるなどして、できるだけ水平に積み上げるような対策をしてください。

高さがそれほどでもない塀や花壇であれば、砕石を基礎として敷きつめた上に石灰モルタルを塗り付け、水平を取りながらレンガを並べて一段目を作ります。一段目が水平にできてしまえば、水糸を巻き付けたレンガを列の両端に置き、糸の高さに合わせてレンガを積んでいく作業を繰り返すだけです。

内装を石灰モルタルで仕上げる

内装をリフォームするためには、下地作りを十分に行う必要があります。今貼っているクロスの上から塗るのか、クロスを剥がして塗るのか、壁板を入れ替えて塗るのかによって下地作りを変えなければいけません。

下地作りが終わったら、コンセントや室内灯のスイッチなど、石灰モルタルを付けたくない場所を養生します。そして下塗り塗料(ガードシーラー)を下地に塗ってしまえば準備完了。まんべんなく石灰モルタルを塗りつけ、好みの仕上げ模様を施して出来上がりです。

内壁なら漆喰がオススメ

石灰モルタルには砂が混じっているので、ざらついた仕上がりになりますが、漆喰の滑らかな仕上がりは、室内の壁や天井に落ち着いた雰囲気を与えてくれます。さらに漆喰には「磨き」という仕上げ方法もあり、表面を磨いて光沢を出すことで、深みのあるツヤが印象を変えてくれるでしょう。

石灰モルタルも漆喰も機能性は同じですが、部屋にしっとり感が欲しい場合は漆喰がおすすめです。

まとめ

石灰モルタルは石や木材より施工がカンタンで、十分な強度が得られるために古くから接着剤や壁材として重宝されてきました。健康や住環境に優しい機能性を再認識したユーザーが、内装を石灰モルタルや漆喰に切り替えています。

世界で一つだけのオリジナルデザインが作れることも魅力です。住まいのデザイン性と生活環境を向上させたいのであれば、石灰モルタルでのリフォームをおすすめします。