外壁のリフォーム例を見ていると、ときおりラップサイディングという言葉を目にします。外壁の種類としてはサイディングというものがありますが、ラップサイディングは何が違うのでしょうか。
おそらく、あなたもラップサイディングの詳細が気になり、情報を集めているかと思います。イメージに沿う外壁であれば、リフォームを決断しようと考えているはずです。
本記事ではラップサイディングの基本的な情報を解説していきます。読むだけでラップサイディングの特徴や施工のための情報がわかるので、参考にしてみてください。
ラップサイディングは木造建築に使われる工法
ラップサイディングは主に木造建築に使われる外壁工法の名称です。和名では「鎧張り」「下見板」と呼ばれます。小さな板を重ね合わせて外壁にするため、住宅に立体感が生まれるのが特徴です。
日本では施工されることが少ないですが、アメリカでは広く採用されています。海外ドラマの日常シーンを見れば、頻繁に出てくるので、イメージが浮かんだ人もいるでしょう。
ラップサイディングは徐々に知名度を上げており、日本国内でも施工例が増えてきています。
ラップサイディングが選ばれる理由
ラップサイディングには他の外壁とは違った利点があります。以下では、ラップサイディングが選ばれる具体的な理由を解説していきます。
断熱性が高い
ラップサイディングを選ぶ利点の1つは断熱性が高いことです。ラップサイディングは凹凸によって日光を分散させます。日光が分散されれば、夏場でも室内の温度が上がりづらくなります。
逆に冬場は凹凸が室内の暖かい空気を逃がしません。断熱性が高ければ必要以上にエアコンを使うこともないので、光熱費を浮かすこともできます。
快適な生活空間を手に入れたい人は、ラップサイディングが向いているといえるでしょう。
デザインの幅が広い
ラップサイディングはデザインの幅が広いことで人気です。詳しくは以下を参考にしてください。
色の選択肢が豊富
ラップサイディングは色の選択肢が多いのが特徴です。金属以外のサイディング素材であれば、ほぼ使うことができるため、選べる色は自然と増えます。
バリエーションが豊富なため、近場に似たようなラップサイディングの住宅があっても外観がかぶる可能性は低いです。ただし、個性が強く反映されるため、自分で素材を選ぶときはセンスが試されます。
自由度が高いぶん、扱いが難しいケースもあるのが難点です。
洋式スタイルの住宅になる
ラップサイディングは海外では普及率の高い外壁です。採用することで、さながら海外の住宅のような雰囲気にすることができます。日本では見かけない洋風建築を目指すならおすすめです。
ラップサイディングの外壁に包まれた住宅はアメリカンスタイルとも呼ばれ、写真にも映えやすいです。友人や親戚を呼べば、ちょっとした自慢にもなるでしょう。
住宅に個性を持たせることができるのが、ラップサイディングの魅力です。
メンテナンス費用が安い
ラップサイディングはメンテナンス費用が安いことで知られています。具体的には100㎡あたりで10万ほど。別途、足場代が必要になることも多いですが、外壁のメンテナンスとしては安価な部類です。
定期的に大きな金額を支払うのが嫌な人は、ラップサイディングに向いているといえます。メーカーによっては30年保証がついていることもあるので、大きな破損が起きても安心です。
初期費用さえ賄えれば、長く住みやすいのがラップサイディングです。
ラップサイディングで使われる素材
ラップサイディングに使われる素材は主に3つあります。詳しくは以下を参考にしてください。
窯業サイディング
窯業サイディングはセメントに繊維を混ぜて作った板材です。サイディングとしては最もシェア率が高く、デザインや価格帯が違うものが豊富にあります。
単純にイメージ通りの外観にしたいときは、窯業サイディングのなかから気に入るものを探すといいでしょう。選択肢が多過ぎて長時間悩んでしまうこともあります。
デザイン性を重視するなら窯業サイディングがベストな選択です。
樹脂サイディング
樹脂サイディングは塩化ビニールで作られた板材です。防火性能が高く、低い気温でも凍結しない特性があります。機能性が高いため、寒冷地で選ばれやすい板材です。
ただし、樹脂サイディングは窯業サイディングに比べると、デザインのバリエーションが少ないです。住宅の外観を重視したい人には向いていません。
樹脂サイディングは住宅の強度を優先したいときには選ぶといいでしょう。
木質サイディング
木質サイディングは天然木を加工した素材です。木の質感により、暖かみのある雰囲気を外壁に与えてくれます。ナチュラルテイストなデザインになるのも魅力です。
注意点は木質サイディングは防火性能が低いことです。元が木なので、火災が起きれば被害が大きくなります。需要が低く、コストも高いので、業者の在庫がないことも多いです。
とくに理由がなければ、木質サイディングを選ぶ必要はありません。
ラップサイディングの施工費用
ラップサイディングへのリフォーム費用は100㎡あたり230万前後です。使う素材や施工範囲で費用は変化します。
もし、費用を抑えたいのであれば、選ぶ素材のグレードをワンランク落としてみましょう。気に入るデザインが見つからないこともありますが、総額はかなり抑えられるはずです。
ただし、グレードが低すぎる素材を選ぶと品質が悪いため、予算と機能性のバランスが取れるように吟味してください。
サイディング工法とのコスト比較
ラップサイディングはメンテナンス費用こそ安いものの、初期費用は通常のサイディングよりも高額になります。具体的には以下のとおりです。
外壁の種類 | 初期費用(100㎡) | メンテナンス費用 |
---|---|---|
ラップサイディング | 約230万 | 10万 |
窯業系サイディング | 約150万 | 35万 |
上記が外壁の種類別の費用を比較したものです。表のとおり、ラップサイディングの初期費用は 窯業系サイディング よりも格段に高くなっています。代わりにメンテナンス費用はラップサイディングほうが安価です。
ただし、同じ住宅に30年住み続けると考えれば、トータルコストはラップサイディングも 窯業系サイディング も大差ありません。ローンを組めば、月々の支払額も似たような額になるでしょう。
ラップサイディングのリフォームを考えている人は、お金を使うタイミングをふまえて検討してみてください。
ラップサイディングの工期
ラップサイディングは外壁のなかでも工期が長い部類です。細かな板を重ねていく地道な作業が必要のため、少ない人員では1ヶ月以上の工期を設けることもあります。
また、天候が悪化すれば作業が中断するので、自然と工期は延長されます。梅雨の時期はほとんど作業にならない日々が続くでしょう。
ラップサイディングへのリフォームをするときは、雨の少ない季節を選ぶのが重要です。
ラップサイディングは環境によって不向き
ラップサイディングは多くの魅力があるいっぽう、環境によっては欠点が目立つことがあります。以下では、ラップサイディングで考えられるトラブルを解説するので、参考にしてみてください。
敷地が狭くなる
ラップサイディングの欠点は敷地が狭くなることです。ラップサイディングは板材が重なっている都合上、元の外壁より外に広がってしまいます。敷地が狭い場合、圧迫感が生まれやすいので注意が必要です。
とくに隣家との距離が近い住宅街では不向きな工法といえます。作業スペースが狭く、工期がさらに長くなることもあるでしょう。
住宅環境によっては満足のいく施工ができないのがラップサイディングといえます。
雨漏りのリスクが大きい
ラップサイディングは雨漏りしやすい弱点があります。板を重ねている都合上、1回隙間が開いてしまえば、雨水の侵入を許してしまいます。強風にあおられた後は、異常がないか確認することが必須です。
日本の場合は毎年のように台風が訪れるので、地域によっては完全に不向きな外壁となります。オシャレという要素を重視すると、思わぬ被害に見舞われることでしょう。
ラップサイディングへのリフォームは、お住まいの地域の気候をふまえて判断してください。
手がけている工務店が少ない
日本ではラップサイディングを手がけている工務店は少ないです。ラップサイディングは細かな板を重ねていく工程に手間と時間がかかります。業者としても、できればやりたくないのが本音です。
仮にラップサイディングを多く手がけている業者が見つかっても、遠方のため対応してくれない可能性があります。対応してもらったとしても、職人の遠征費用がかかることでしょう。
ラップサイディングへリフォームは、近隣に手がけている工務店がないと難しいのが実情です。
ラップサイディングの代替手段
ラップサイディングに興味を持っている人は、オシャレな外壁にリフォームすることを重視しているのではないでしょうか。オシャレな外壁という意味では、ラップサイディングでなくとも実現可能です。
以下では、ラップサイディングの代わりになるオシャレな外壁を紹介していきます。
サイディング
オシャレな外壁の定番といえば、通常のサイディング系外壁です。使用する板材自体はラップサイディングと変わりません。ラップサイディングが立体的なのに対して、サイディング系外壁は平面なのが特徴です。
平面状だとオシャレな外壁にできないように思えますが、使える板材の選択肢が豊富なため心配無用です。自分の好みに応じて色や質感、素材を選ぶことができます。
ラップサイディングへのリフォームを決める前に、まずは通常のサイディング系外壁をチェックしてみてください。
モルタル
日本では広く採用されているモルタル外壁でもオシャレな外観を実現することができます。モルタル外壁は目にすることが多いため、新鮮さに欠けると思った人もいるでしょう。しかし、アイデア次第でセンスのある外観になります。
たとえば、モルタル外壁の土台や一面にレンガを置くことで、モダンな印象の雰囲気に変化します。ツタや花で外壁を覆えば、華やかさと清涼感を持たせることが可能です。
モルタル外壁はもともとシンプルな見栄えなので、工夫次第でまったく違った印象に変えることができます。
ガルバリウム鋼板
外壁にクールな印象を求めている人はガルバリウム鋼板を使うのもいいでしょう。ガルバリウム鋼板は金属製の外装材です。金属特有の冷たいテカリがあり、存在感のある住宅になります。
ガルバリウム鋼板はカラーバリエーションの多くあり、デザインの幅が広くなるのが魅力です。定番カラーは黒ですが、鮮やかな赤やグリーンといったカラーもあります。
ラップサイディングと同じで断熱性が高く、メンテナンスがラクなのも重要な要素です。機能性とデザインを両立するなら、有力な選択肢といえます。
ラップサイディングへのリフォームは事前の検討を
ラップサイディングの詳細を解説してきました。ラップサイディングはアメリカではメジャーな木造建築の工法です。オシャレな外壁になるほか、メンテナンス費用が安いことが特徴です。
ただし、日本では手がけている工務店が多くありません。狭い敷地だと圧迫感が生まれるなど、不満が出ることもあります。ラップサイディングへのリフォームは入念な検討をしてから決断してください。