スタッコ仕上げは外壁模様の仕上げ方法で昔から採用されているとても馴染み深い模様の一つです。外壁の模様はいろいろあり工事方法や費用も違いますので、これから外壁工事を検討している方に向けて、スタッコ仕上げの基礎知識と様々な外壁の仕上げ方法についてご紹介していきます。
スタッコ仕上げとは壁の模様の仕上げ方法の一つ
スタッコ仕上げと言葉だけ聞いてもどんな模様かイメージできないかと思います。ここではスタッコ仕上げとはどんな模様なのか、特徴はなにかをお伝えしていきます。
スタッコ仕上げの特徴
スタッコとは、モルタル外壁など湿式工法(水やセメントを混ぜた材料を使ってつくること)で施工した外壁に模様をつける仕上げ方法の一つです。セメントモルタルと骨材などを混ぜた塗り材を鏝や木片で叩いて凹凸模様に仕上げていきます。
左官職人によるモルタル外壁の鏝仕上げが一般的でしたが、現在は合成樹脂エマルション系の材料などエアスプレーガンの吹き付け施工やローラー、刷毛を使用して仕上げる方法もでてきました。
見分けが難しい!スタッコ仕上げはどんな模様?
スタッコ仕上げと似ている模様がリシン仕上げです。リシン仕上げもスタッコ仕上げと同じように凹凸模様となっていますが、スタッコ仕上げよりも細かい凹凸となっており、砂や石を混ぜているため表面がザラザラとしています。
スタッコ仕上げとリシン仕上げは混同されやすく見分けにくいですが、大まかに言いますと凹凸が大きく表面は比較的に滑らかなのがスタッコ仕上げ、凹凸が細かくザラついた手触りのものがリシン仕上げとなっています。
スタッコ仕上げにする外壁の下地とは?
湿式工法でスタッコ仕上げにする場合は、左官の職人にセメントモルタルを塗ってもらい鏝などの道具を使って仕上げていきますが、合成樹脂エマルション系の塗料を使用して吹き付けていく際は、適用下地(簡単に言いますと建物の外壁の仕上げ材)というものがあります。
合成樹脂エマルション系の塗料を使用する場合の適用下地は、コンクリート、セメントモルタル、ALC(軽量気泡コンクリート)パネル、PC(プレキャストコンクリート)部材、スレート板などになり、適用下地ではない材に施工すると不良を起こす可能性があるので注意しましょう。外壁の適用下地は使用する塗料によっても異なってきますので、選定する塗料の仕様を確認することが大切です。
スタッコ仕上げの耐用年数と塗替えが必要なケースとは
スタッコ仕上げの耐用年数は約10年と言われています。塗膜が劣化すると防水性が低下して水分を吸収するため、そのまま放置するとさらに劣化がすすみ耐久性を落とします。あまりに水気を吸い込んでしまうと建物の柱や土台などに影響がでて腐食する可能性があるので、ある程度の年数が経ち、劣化が見えたら塗り替えを行いましょう。
モルタル外壁が朽ちている、大きなヒビ、割れ、欠落がない限りは塗装工事でメンテナンスすることができます。しかし、上述した外壁が朽ちている、大きなヒビ、割れ、欠落がある場合は、大工と左官による外壁モルタルの塗り直しが必要になります。
スタッコ仕上げのメリット・デメリット
ここではスタッコ仕上げのメリット・デメリットについてお伝えしていきたいと思います。
スタッコ仕上げのメリット
スタッコ仕上げの特徴である凹凸模様は外壁を立体的に見せてくれるためデザイン性の高い仕上げとなっています。スタッコ仕上げの外壁は、現在こそ採用する数が減ってしまいましたが、以前までの住宅には多く普及し一般的な外壁仕上げだったため、周辺の建物と違和感なく馴染みやすいです。
また、塗膜を厚くして施工しますので耐用年数は長く、使用する塗料の種類によってはさらに寿命を延ばすことができるでしょう。
スタッコ仕上げのデメリット
スタッコ仕上げは凹凸が深くなっているため、汚れが溜まり目立つかもしれません。模様をつけるのも高い技術が必要なため、作業を行う職人の腕により仕上がりが左右されます。通常の塗装よりも手間が掛かるのもスタッコ仕上げのデメリットであり、再度吹き付け塗装を行うと工事費用も掛かります。
スタッコ仕上げの方法・工事日数・費用相場
スタッコ仕上げの方法は鏝仕上げと吹き付け塗装の二種類があります。ここでは費用相場と工事日数、工事工程についてお伝えしていきます。
鏝仕上げ:工程・工期・費用相場
鏝仕上げ費用相場 (1㎡あたり) | 約5,000〜7,000円/㎡ ※足場設置代:約700〜1,000円/㎡ |
---|---|
工期 ※一般的な住宅(20〜30坪程度) | 約1ヶ月 |
鏝仕上げの場合は、外壁下地の施工後、塗り材の調合を行います。セメント系には色モルタル、樹脂モルタルがあり、その他にも漆喰や糊土(土にすさを合わせて糊で練り込んだ材料)などもスタッコ仕上げにすることが可能です。
セメント系は塗り厚5〜8mmほどを限度に一度塗り、それよりも厚く塗る場合は二回目以降に塗ります。塗り材を鏝塗りした後、専用器具または木鏝で叩き模様を付け、塗り材硬化後に凸部を鏝で押さえて仕上げます。湿式工法の工期は塗り材の乾燥状態、塗り厚によって大きく日数が変わってきますので、一概にこれくらいの期間とは言えませんが、目安は一般的な住宅(20〜30坪程度)で約1ヶ月となります。
吹き付け仕上げ:工程・工期・費用相場
吹き付け塗装仕上げ費用相場 (1㎡あたり) | 約2,500〜4,500円/㎡ ※足場設置代:約700〜1,000円/㎡ |
---|---|
工期 ※一般的な住宅(20〜30坪程度) | 約10〜14日間 |
吹き付け塗装は鏝仕上げと比べて費用も安く、工事日数も短くなります。ただし、こちらも天候によって施工状態が左右されますので、多少の工事の遅延は発生すると考えておいた方がいいでしょう。工事の工程は、まず既存の外壁に下地処理を行い、下塗り材を塗布します。
下塗り材は使用する塗料の仕様に適した材料を使います。その後に主材となる塗料をスプレーガンで凹凸模様に吹き付けていきます。塗膜の硬化後、二回目の吹き付けを行い仕上げます。
スタッコ仕上げの外壁の補修はほとんど吹き付けで行う
スタッコ仕上げは外壁模様の仕上げ方法の一つですので、リフォームのほとんどは吹き付け塗装で行われていきます。モルタル外壁の欠落など規模の大きい補修がない限りは、部分的に吹き付けて補修することが可能です。
ただし、注意する点として部分的にスタッコ仕上げで補修をすると、古い外壁の色と新しく仕上げた外壁の色が違ってきますので、統一した色で仕上げるのなら補修する箇所だけ吹き付けてスタッコ仕上げにし、最終工程で壁全面を塗装するといいでしょう。
鏝仕上げは外壁下地の補修が必要な時に行う
鏝仕上げを行う場面とは、外壁が損傷してモルタルを塗り直す必要があるときです。厚み1〜2cmほどのモルタル外壁が欠落している場合、吹き付け塗装では直せませんので、左官の職人にモルタルを塗ってもらい、塗り付け後に塗装の職人に吹き付け塗装を行って仕上げてもらうのが一般的な流れです。
外壁が欠落してしまう原因は、塗膜の劣化や外壁のひび割れによるものです。塗膜が劣化していると防水機能は低下していますので、水が壁の中に入ってきます。水が侵入すると外壁下地であるモルタルの耐久性は落ち、長い期間その状態を続けているとやがて欠落してしまいます。ひび割れもこれと同様なことが起きますので、定期的に塗装を行って保護していくことが大切です。
劣化状態の見分け方とメンテナンス方法
外壁に塗装されている塗料によって耐用年数は異なりますが、一般的に10年ほど経つと塗装の塗り直しを行う時期です。
【劣化状態を見分ける方法】
・外壁を手で触った時に白い粉が付着する
・ひび割れがある
・塗膜の膨れがある
・塗膜の剥がれがある
上記のような症状が確認できましたら塗装工事や補修工事を行いましょう。外壁を手で触ったときに白い粉が付着すると塗膜が劣化している証拠になります。また、外壁にひび割れがある場合は、シーリングを充填して補修を行ってもらいましょう。
スタッコ仕上げの他にもある!外壁の仕上げ方法の種類
外壁の仕上げ方法はスタッコ仕上げだけではありません。ここでは、スタッコ仕上げの他にもある外壁の仕上げ方法について費用相場や工期も含めてご紹介していきます。
リシン仕上げの特徴と費用相場
費用相場 (1㎡あたり) | 約1,000円/㎡〜 |
工期 ※一般的な住宅(20〜30坪程度) | 約10〜14日間 |
リシン仕上げは塗料に石を混ぜて表面に細かい凹凸模様ができる粗い仕上がりになります。施工手順は基本的にスタッコ仕上げの吹き付け塗装と変わりませんが、塗膜が薄くなるためリシン仕上げに適した塗料を使う必要があります。リシンは水分を吸収しやすく、その分蒸発もしやすい素材となっています。
この仕組みから呼吸する壁と言われて、通気性が良いとされていますが、正式には塗料の性能によるもので、リシン仕上げならなんでも通気性が良いというわけではありません。適した塗料を使わないと塗料の塗膜が壁を覆い、吸収した水分の蒸発ができなくなります。水分の蒸発ができないと塗膜が膨れて破れてしまうので注意しましょう。リシン壁用に開発された塗料や透湿性の高い塗料を使うなどリシン仕上げに適した塗料を使いましょう。
掻き落とし仕上げの特徴と費用相場
費用相場 (1㎡あたり) | 約8,500円/㎡〜 |
工期 ※一般的な住宅(20〜30坪程度) | 約1ヶ月 |
掻き落としは上記と同様に材料はリシンですが、こちらは吹き付け塗装ではなく左官工事となります。鏝でリシンを塗った後に、最後の仕上げで剣山やブラシなどを使用して表面を引っ掻き、ざらざらした細かな模様をつくります。掻き落とし仕上げは、工程が増える分手間はかかりますが、独特な風合いをだすことができます。
ボンタイル仕上げの特徴と費用相場
費用相場 (1㎡あたり) | 約1,000円/㎡〜 |
工期 ※一般的な住宅(20〜30坪程度) | 約10〜14日間 |
ボンタイルまたはタイル吹き、玉吹きとも呼ばれ、凹凸を平べったく潰したような模様が特徴で滑らかな仕上がりとなっています。合成樹脂などの結合材にけい砂、寒水石(かんすいせき)、軽量骨材を主原料とする主材を吹き付けて凹凸模様をつくります。その後にローラーや鏝を使用して凹凸模様を押さえ仕上げます。施工が比較的に簡単で安定した仕上がりが期待できます。
ローラー仕上げの特徴と費用相場
費用相場 (1㎡あたり) | 約1,000円/㎡〜 |
工期 ※一般的な住宅(20〜30坪程度) | 約10〜14日間 |
マスチックローラー仕上げ、ゆず肌仕上げなどローラーを使用した仕上げは複数あります。マスチックローラーは大きめの凹凸模様をつけることができ、吹き付け塗装のように養生の手間や塗料の飛び跳ねを少なくさせることができ、効率的に作業を行うことができます。
使用するローラーには長毛タイプと中毛タイプ、短毛タイプがあり、それぞれ仕上がり方が異なります。ローラーの毛が短くなるほど、きめ細かい仕上がりにすることができます。
ジョリパット仕上げの特徴と費用相場
費用相場 (1㎡あたり) | 約4,000〜6,500円/㎡ |
工期 ※一般的な住宅(20〜30坪程度) | 約12〜14日間 |
アイカ工業が販売するジョリパットは塗料の一種ですが、吹き付けや鏝、ローラーで施工することができる塗り材となっています。材料は樹脂と様々な骨材を使用し混合したものでつくられており、左官が施工する京壁のような鏝仕上げが可能です。
ジョリパットは柔軟性のある素材のためひび割れの少ない素材ですが、樹脂を原料としているため経年変化により色が劣化します。漆喰や聚落壁(じゅらくかべ)の色のつき方とは違い、再塗装など定期的なメンテナンスが必要です。
まとめ
ここまでスタッコ仕上げについてお伝えしてきました。スタッコ仕上げは外壁の模様をつける仕上げ方法の一つです。スタッコ仕上げの模様は凹凸に仕上げられており、外壁を立体的に見せることができます。
外壁にはいろいろな模様の仕上げ方法がありますので、これから外壁工事を行うという方は、今回お伝えさせてもらいましたことを参考にして検討していただけたらと思います。